春夏冬の謎に迫る! 高井戸『春夏冬要』
約1ヶ月前、京王線の中河原駅近くにある、炎の料理人が腕を振るう中華食堂『春夏冬』を紹介した。
そのとき記したように、春夏冬という屋号のお店は、都内各地に存在しており、
かつては明大前と八幡山にもあったが、調べたところ、現存するのは中河原、東府中、高井戸の3店。
中河原の店主に、3店の関係をたずねたかったのだが、店主は寡黙かつちょっと怖そうなオーラがあるので、聞けずじまい。
その数日後、井の頭線の高井戸駅が最寄りの支店を訪問。ファサードには『春夏冬要』と記してある。

店内はカウンター席のみで、夜遅い時間ながら繁盛しており、唯一空いていた右端の席に案内される。
中河原店と同様、男性のワンオペだったが、こちらの店主は愛想が良く、常連らしい先客と楽しそうに会話をしている。
先客は全員飲んでいたが、私は既に酔っていたので、食事だけにしておく。
壁の貼紙メニューから、他店では見たことのない謎の商品「快楽ラーメン」1000円を選択。
メニューを撮影したかったが、他のお客さんが写ってしまうので断念。
代わりに、私の席の目の前にいた招き猫を撮影。「代わり」になるのかは疑問だが。

しばらくすると、けっこう大きめの丼に盛られた、快楽ラーメンが登場。

横アングルではハシを置いてみたが、丼の中央だと落ちてしまいそうな器のデカさ。

スープを啜ってみると…醤油味とも塩味とも違う、不思議なテイスト。中央にたっぷり盛られた、乾燥海老の出汁も出たのか。
具材は乾燥海老の他、溶き玉子、人参、ほうれん草、大量のワカメで、肉は見当たらない。
食べている途中で、ひじきも入っているのに気づいた。

快楽の意味は不明のまま、一気に食べてしまい、お会計をして退散。
店を出てから、春夏冬3軒について質問するのを忘れたことを思い出す、酔っ払いのダメなオレ(恥)。
ただし、先述したように店主は威圧感がなく朗らかだったので、次回訪問時こそ話しかけてみることにした。
数日後、荻窪の焼き鳥屋店『モッキンバード』で飲んだ帰りに、環八通りを南下し、高井戸店こと春夏冬要に2度目の訪問。
モッキンバードの女将さんは、接客は素晴らしく丁寧だが、提供する焼酎はかなり濃く(笑)、徒歩移動でだいぶ酒が廻ったが、
それでも「ビンビール」600円を注文。アサヒスーパードライの中瓶だった。

おツマミとして、大好きな「ギョウザ」500円と、中河原店でも頼んだ「カレーマーボ豆腐」を注文。
店主は私のことを覚えていてくれたようで、いろいろと話しかけてくれた。
この日はメニュー画像を撮影。こちらはドリンクと麺類2種。

メインの麺料理やライス。基本の「ラーメン」は700円。

続いて、定食や丼などのご飯もの。「肉ニラモヤシ炒め」より左は、表記はないけれどおそらく定食のはず。

最後に、入りきらなかったご飯もの。かつては「カツ丼」もあったようだ。

右上に見える「クマラーメン」「ニララーメン」と、定食左端の「朝鮮風焼肉」は、中河原店と共通する春夏冬のオリジナル商品だ。
そして、もうひとつのオリジナル商品である、カレーマーボ豆腐が登場。

カレーマーボは、定食だと950円だが単品価格は不明で、会計時の暗算で900円と判明。
ただし完成した商品は、かなりの大皿に入ったデカ盛りで、定食より多いのかもしれない。
ひと口食べてみると、中河原店と同様、カレーと麻婆のいいトコ取りという印象で、ほのかに甘さを感じる。
具材は、豆腐、ネギ、ひき肉の他、中河原店ではなかった玉ねぎが入っており、柔らかい豆腐とは異なる食感を楽しめる。

中河原店と高井戸店、どちらの春夏冬も、カレーマーボ豆腐はウマい!
ビールを飲み終え、「ウーロンハイ」450円に変更を試みるも、「緑茶しかない」とのことで、緑茶ハイに。価格はたぶん一緒。

ちょうどその頃、餃子が焼き上がる。一人前3個だがジャンボサイズだ。

中身は、しっかり刻まれた野菜と、よく練られたお肉が半々で、なかなかイケる。

カレー麻婆にも浸してみたが、お互いの旨味がケンカしてしまい、好相性とはいえなかった。

餃子+カレー麻婆は、立川の『四つ角飯店』でも数年前に試しているが、そういえば、あのときもイマイチだったな。
2杯目の緑茶ハイを頼んだ頃、いよいよ店主に春夏冬3軒の関係を質問したところ、
「春夏冬は、みんな親戚でやってたんだ。中河原のはオレの弟だよ」。
なんと、中河原の寡黙な店主と、高井戸の陽気な店主が兄弟だったとは! ※顔もあまり似ていない気がする
その後、店主に各種情報を教えてもらったのだが、2軒目ゆえ泥酔してしまい、内容の記憶がない。
唯一、夜の営業開始時間をたずね、「6時くらい」と回答をいただいたのを覚えていたので、数日後にシラフで3度目の訪問。
お店に着いたのは、18時ちょっと前くらいだったが、既にオープンしていた。
入店してすぐに、瓶ビールを注文。ついでに店主に「よかったら一杯」とおススメ。
「どうも!」とコップに注いだビールを飲み干した店主に、前回聞いた分も含め、春夏冬について改めて質問。
主な内容を以下に転記していく。太字部分が店主のコメントだ。
「春夏冬の創業者は、オレの義理の兄さんで、最初にできたのが、明大前店と和泉多摩川店」。
小田急線の和泉多摩川駅にも支店があったのか!
「八幡山にあった店も親戚がやってたし、中河原と東府中はオレの弟の店だし、みんな親族経営だよ」。
なんと、中河原店の店主は東府中店も経営しているのか。
なお、食べログに「分倍河原にも似た名前の店があった」という投稿があったが、
お兄さんは覚えておらず、後日弟さんにたずねると「ないです!」と断言。
つまり、春夏冬グループは、新旧合わせて6店舗だったと思われる。
「オレは八幡山、弟は明大前で働いていた。修行…というか、義兄にこき使われたんだよ(苦笑)。
八幡山店は特に忙しくて、12時間くらいぶっ通しで働いたけど、休憩するヒマもなかった。
食事だって厨房内でしゃがんで、メシをひと口食う程度だったからね。で、独立してこの店を開いたのが、今から36年前」。
店内の食品衛生管理責任者の札には、「○○要」(○○は店主の名字)と記されているのだが、
「そう、屋号の要はオレの名前。弟はマサユキっていうんだ」。 マサユキといえば…
中河原店のファサード表記は「幸 春夏冬」だし、東府中店は、ネットでは「春夏冬 正」と呼ばれている。
そうか、幸も正も弟店主の名前だったのか!
「弟さんは、いつも無言でちょっと怖いですね」という私のやや失礼な発言に対し、
「アイツはオレと違い、営業中はお客さんとも全然しゃべらないだろうけど、無口なだけで、そんなに怖くないよ。
オレは、休みの日に常連さんと飲んだり、ゴルフに行ったりしてるけど、弟はそういう付き合いは一切してないみたいだな。
昨日だって、オレは店が終わって2時間くらい寝ただけでゴルフ行って、また夜仕事だから大変だったよ(※昼営業は休んだ模様)。
まあ、弟は仕事にマジメだから、結構(お金を)ためこんでるんじゃないかな。オレなんか全然残ってないけどさあ(笑)」。
店を2軒出している、弟さんがためこんでいるかはさておき、店主の「全然残ってない」は謙遜だろう。
クマラーメンやニララーメンなど、全店舗共通のメニューがあることについては、
「共通の商品もあるけど、メニューについては“好きなようにやっていい”って(義兄に)いわれたから、習ったのとは違う味もあるよ。
カレーマーボ豆腐は、八幡山店が始めたんだけど、結構イケるでしょ。快楽ラーメン? あれはオレのオリジナルだよ」。
「快楽」のネーミング理由を聞きそびれたのが残念。
親族間で修業し、のれん分けされた春夏冬グループだが、餃子の味や形状が、兄弟のお店でも異なるように、
提供商品や味付けについての縛りはなく、個々のお店に任せていたようだ。
貴重なお話をうかがっている最中に、常連さんらし女性と男性が別々に入店。
彼らは何も告げていないのに、店主が女性に「ライムサワー」、男性には「ハイボール」を作り、
さらに、メニューにはない「スパゲティサラダ」と「ポテトフライ」も提供。なるほど、常連さんとの結びつきは強いようだ。
他にもお客さんがやってきて、店主が忙しくなってきたので、私も取材(?)をやめて、飲み食いに専念する。
前回餃子を食べたので、今回は「ワンタンメン」950円の麺抜き、「ワンタンスープ」800円をオーダー。
すぐに店主が調理に取り掛かる。こちらのお店は、弟さんのように炎を高く舞い上げない。

店主の右脇に置いてある寸胴の中身が、ラーメンや各種料理に使用されるスープ。

怪しげな色をしているが、私は入店直後、店主が炊いたスープを加えているのを見ている。
長年、加熱と継ぎ足しを繰り返すことで凝縮された、お店の歴史と旨味が、この寸胴に結集しているのだ。
ただ、その後はワカメを戻したお湯や、フライドポテトを揚げて残った油も加えていたような…? いろいろと謎の多いスープである。
そんな謎スープに、魔法の粉や調味料各種を加えた、ワンタンメンの麺抜きが完成。

丼は、初回と同様のデカいサイズ。具材も豊富なので、800円でも割高に感じない。
ワンタンは、店主が注文後に包んだものが10個で、ちゃんとお肉が入っている。

具材は、ワカメ、玉ねぎ、溶き玉子に、ニンニクも入っていた。
スープの味は快楽ラーメンと同様、断定できないテイスト。結構しょっぱく、ビールを飲み終えたので、ウーロンハイにチェンジ。
ワンタンだけでなくスープもツマミに、ウーハイをどんどん飲み干したところ、ちょっと酔ってきたので、シメの食事をお願いする。
オーソドックスな「塩ラーメン」と迷ったが、醤油味のラーメン700円を選択。
春夏冬伝統のクマラーメンやニララーメンも気になったが、私の苦手な辛口らしいので回避。
ハイボールを飲んでいた常連客のオゴリでハイボールを2杯飲み、さらに陽気になった(笑)店主が作ったラーメンがこちら。

この丼もやっぱりデカく、ミニチャーハンがあるように、半ラーメンもあると嬉しい。
ベースの謎スープの影響か、スープには醤油テイストだけでない「別のなにか」を感じる。
具材はチャーシュー、メンマ、モヤシ、ネギに、輪切りスライスの茹で玉子。自家製のチャーシュー以外は平凡だった。
快楽ラーメンのときに触れ忘れたが、麺は平打ちっぽい形状で、私の好きなタイプ。

店主曰く「製麺所に依頼した特注麺で、春夏冬でも使用しているのはウチだけ」だそうだ。
スープは残したが、麺と具材は食べ切り、お会計をお願いすると、「え、もう帰るの? じゃあまた明日ね」だって(笑)。
「明日は無理です…」と返答しながら、翌日は日曜だったので「そういえば、定休日は何曜ですか?」と質問したら「ないよ」だって。
お孫さんの運動会に参加したり、既述したゴルフや、二日酔いなどのやむを得ない理由(苦笑)で、臨時休業する場合もあるようだが、
どうか無理せず、この先も元気に営業を続けてほしいものである。
そしてつい最近。久々に弟さんが営む中河原の『幸 春夏冬』を訪問。
麺類のトッピングにもなる「豚角煮」650円でビールを飲みながら、他のお客がいなかったので、思い切って話しかけてみた。

「この前、高井戸にある同じ名前のお店に行ってきたんですが、あちらの店主はマスターのお兄さんだそうですね」。
弟店主は、「そうです」と返答するも、「アニキは元気でしたか?」などと逆に聞かれることはなく、すぐに会話はストップ。
めげずに、「東府中のお店も経営しているんですよね?」や、「よかったら一杯どうですか」(「結構です」と即答)などと話しかけ、
「お兄さんが“弟はマジメだから”といってましたよ」と伝えたら、一瞬戸惑った様子で「そんなコトないです」と苦笑いを浮かべた。
あの、ゴルゴ13のような寡黙な弟店主が、苦笑いとはいえ笑顔を見せてくれたので満足である。
近いうちに、弟さんが経営しているもうひとつのお店、東府中の『春夏冬 正』にも行ってみようと思っている。
春夏冬要
東京都杉並区高井戸東4-3-13
京王線高井戸駅より徒歩約7分、JRだと荻窪駅から徒歩約25分
営業時間 11時半くらい~14時、18時~24時くらい、夜は客がいないと早く閉める
定休日 基本無休だが、文中で説明したように臨時休業もあり